介護
洗たく屋さんのヘルパーステーション
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令和4年9月の研修報告です。
今月は「介護技術(入浴介助・衣服の着脱介助・移乗介助)」の研修を行いました☻
介護技術(入浴介助・衣服の着脱介助・移乗介助
1.入浴介助の手順と、注意すべき4つのポイント
介護をするうえで欠かせないケアのひとつが、入浴介助。体をきれいに保つということは、人として最低限の欲求であり、尊厳の維持にもつながります。また、体の清潔が保たれないと、皮膚の病気や尿路感染症などを発症する原因にもなります。
しかし、自分の体を洗うこととは違って、他人の体や頭を洗うことは難しいもの。どのようなことに気をつければいいのか、どんな順番でおこなったらいいのかなど、戸惑うことが多くあることでしょう。
高齢者が気持ちよく過ごすために、そして健康でいるためにも重要な入浴介助をおこなううえで気をつけるべきポイントや手順をまとめましたので、参考にしてください。
<入浴介助で準備するもの>
まずは、入浴介助を始める前に準備しておくものをご紹介しましょう。
・タオル(大きくて吸水性の高いもののほうが、短時間で体を拭けるので便利です)
・着替え、必要に応じて新しいオムツや尿取りパッド
・ボディーソープまたは石鹸(泡立てるのに時間がかからないボディーソープのほうがおすすめです)
・ボディータオル
・シャワーチェアや転倒防止マットなど
・必要に応じて保湿剤や爪切り、皮膚科で処方されている薬など
使うものの準備ができていないと、途中で取りに行って、ご本人を裸のまま待たせてしまう、という事態を招いてしまいます。入浴介助では、ひとりにさせないことが原則。時間に余裕をもって、準備しておきましょう。
介助者が身につけるものとしては、以下のものがあると便利です。
・エプロン(水を弾く素材のもの)
・滑りにくいゴム製の靴
・手袋
自分自身が濡れてしまう可能性があること、バスルームの床は滑りやすいことを考慮した服装を心がけましょう。
では、ここからは実際に入浴介助をどのように進めていくのか、入浴前・入浴中・入浴後に分けて説明していきます。
<入浴前>
入浴介助を実際にする前に、準備や確認を忘れないようにしましょう。事故や体調の悪化の防止につながります。
1.入浴介助を始める前に、浴室の準備をしておきましょう。浴槽にお湯を張り、浴室と脱衣所を温めておきます。浴室暖房があれば、それを利用するとよいでしょう。脱衣所に小さい暖房器具などを置くと便利です。
2.体調が悪くないかを事前にチェックします。体調が悪いまま入浴すると、さらに体調が悪化してしまいます。血圧が高すぎないか、発熱していないか、など確認してから、入浴を促すようにしましょう。
<入浴中>
1.足元に注意しながら椅子に腰かけてもらい、足元からゆっくりお湯をかけていきましょう。温度を確認しながら、少しずつ慣れてもらいます。
2.ある程度温まったら、頭から洗っていきます。頭を洗うときには、指の腹でやさしくこすります。シャンプーの流し残しがないように、すすぎはしっかりおこないましょう。
3.体はボディータオルでやさしく洗います。高齢者の方は皮膚が弱いことが多く、力を入れてこすると傷つきやすいので注意しましょう。汗をかきやすい場所(脇、乳房の下、肘や膝の内側など)は、特に洗い流しがないように気をつけてください。また、排泄物で汚れやすい場所もしっかりと洗っておきましょう。
4.洗い終わったら、お湯に浸かります。手すりをつかんでもらったり、体を支えてあげたりしながら、ゆっくりと浴槽に入ってもらってください。のぼせてしまう危険もあるので、お湯に浸かる時間は5分程度にとどめておいてください。浴槽から出るときも、バランスを崩さないよう支えながら、ゆっくりと出ましょう。
<入浴後>
1.体や頭の水分をしっかりタオルで拭きとったら、着替えをします。入浴後は血圧の変動でふらついてしまうこともありますので、いすに座ってゆっくりと着替えをおこないます。
2.入浴後の体調の変化に気をつけ、しっかり水分補給をしてもらいましょう。
3.入浴後は皮膚や爪が柔らかくなりますので、必要に応じて保湿剤を塗ったり、爪切りをしたりするとよいでしょう。皮膚科で処方されている軟膏なども、入浴後の皮膚がきれいになったタイミングで塗るとよいです。
<入浴介助で注意するポイント>
1.体の状態を観察する
日常生活において頭から足先まで、入浴時以外で全身を確認する機会はなかなかありません。入浴介助をしながら、皮膚が乾燥していないか、傷がないかなどをチェックするようにしてみてください。
寝たきりでなくても、座っている時間が多いと、腰などに褥瘡(じょくそう/床ずれのこと)ができることもあります。また、病気や怪我のため、皮膚が腫れたり赤くなったりしていることも。入浴時は全身を見ることができるので、異常の有無を確認する機会にしましょう。
2.体調が悪いときは無理をしない
体を清潔にすることは大切ですが、体調が悪いときに無理をする必要はありません。無理をすると、悪化させてしまう原因にもなってしまいます。そのようなときは、入浴の代わりに温かいタオルで体を拭いたり、足だけをお湯につける「足浴」をおこなったりしてもよいでしょう。
3.安全を優先する
自宅の浴室で入浴介助をおこなう場合、設備や広さなど、どうしても施設と同じようにはできません。そのぶん、安全には十分に配慮しましょう。シャワーチェアや転倒防止マット、手すりなど、設置できるものを最大限利用したり、可能であればひとりではなくふたりで介助したりするなど、工夫してください。
介護度が上がり、家族での介助が困難になった場合は、訪問入浴サービスやデイサービスでの入浴などを利用することも、選択肢として考えてみるとよいでしょう。
4.できるところは自分でやってもらう
入浴介助をしていると、本人ができるところまで、ついつい手を出してしまいがちです。そこはぐっとこらえて、できるところは自分でやってもらうように心がけましょう。特に、羞恥心を伴う局部については、可能であれば自分で洗ってもらいましょう。本人にできることをやってもらうことは、ADL(日常生活動作)の維持にもつながってきます。
<事前準備で、気持ちのよい入浴につなげよう>
介助をする家族にとっては、入浴介助は体力も時間も必要なので大変です。その苦労を軽減するために必要なのが事前準備であり、ポイントを知っておくことです。入浴は体が清潔になったり、病気の予防になったりするだけでなく、ご本人の気分転換にもなるもの。介助をする側もされる側も、気持ちよく入浴の時間を過ごすことができるよう、準備や手順など気をつけておこないましょう。
2.脱健着患って一体何?
介護をはじめたばかりの方が戸惑うことのひとつが、着替えの介助。高齢者の衣類は食事や排泄などで汚れることも多いため、着替えの介助をする機会は頻繫にあります。場合によっては、1日に複数回着替えなければならないこともあるでしょう。
この着替えの介助、一見簡単そうに見えますが、手順やコツを知らずにおこない手間取ってしまうと、介護する側もされる側も負担が大きくなってしまいます。
そこで、着替えの介助の手順やコツについて、この記事でやさしく説明していきます。
<着替えは心も体も健康にする>
高齢者の衣類は、汚れていないように見えても、意外と汚れています。汗や乾燥した皮膚の付着など気づきにくい汚れがたくさん付いているのです。とくに下着は汚れやすいので注意が必要。清潔を保つために、こまめな着替えは欠かせません。
また、着替えをすることによって、気分転換をさせることができ、生活のメリハリにもつながります。寝る時や外出時には適切な服に着替えることで、高齢者は時間の流れは意識し日常生活への活力が出るのです。
このように、体と心、両方の健康を維持していくために、着替えは重要な役割を持ちます。
<着替えの介助をスムーズにおこなう2つのコツ>
着替えの介助は、慣れるまでコツが必要です。以下の2点を意識するとスムーズに介助できるようになりますので、ぜひ参考にしてください。
着替えの介助のコツ1:着替えやすい衣類にする
着替えの介助をスムーズにおこなうには、着替えやすい衣類を選ぶことが大切になります。着替えやすい衣類とは、以下のようなものです。
・伸縮性のある生地
・ゆとりのあるサイズ
・大きめのボタン、あるいはマジックテープを使ったもの
・ウエストがゴム製のもの
サイズがきつかったり、生地に伸縮性がなかったりすると、窮屈な動きを高齢者に強いることになってしまいます。ある程度余裕を持った動きができる衣類を選ぶと、介助がしやすくなるでしょう。
着替えの介助のコツ2:関節をしっかり支える
トレーナーの袖やズボンの裾に体を通す時に、関節をしっかり支えるようにしましょう。関節の可動域が挟まる「拘縮」を高齢者が抱えている場合、無理に腕や脚を引っ張って着替えさせると、怪我につながりかねません。そこで、肘や膝、手首や足首などを支えて関節を安定させましょう。もし自分で身体を動かすことが難しい人の場合は、とくにこの関節に注意して着替えの介助をおこなうとよいでしょう。
<半身麻痺の着替えの介助は「脱健着患」が基本>
着替えの介助……とくに半身麻痺や身体の片側に障がいを持っている方の着替えの介助の際に重要となるポイント、それは「脱健着患」(だっけん・ちゃっかん)です。
「脱健着患」とは、「(衣服を)脱ぐときは問題のない健康なほう(健側)から、着るときは病気や怪我、麻痺などあるほう(患側)から」という意味。どうしても動きが制限される着替えのタイミングで、高齢者にできる限り負荷をかけないためです。介護職員・看護職員にとっては基本的な原則として知られています。
患側を着るときには、うまく動かせないほうから袖を通す。脱ぐときには、健康な側から袖を抜いていく。これを意識するでけでも、高齢者も介護者も安心して介護をすることができます。以下で、実際の手順を確認しましょう。
(脱衣)
1.安定した場所に座ってもらう
2.脱がせやすいように、裾をたくし上げておく
3.(可能なら)利用者自身にボタンを外してもらう
4.健側の腕を裾から抜いていく
5.患側は利用者本人に脱いでもらう
6.(トレーナーなど被るタイプの衣類の場合)あごなどに引っかからないように頭側を脱ぐ
(着衣)
1.患側から、衣服の袖口に手を入れて迎え手をしながら着せる
2.健側の腕を袖に通していく
3.(トレーナーなど被るタイプの衣類の場合)頭側を衣類に通す
4.(可能なら)利用者自身にボタンを留めてもらう
座った状態を保てない場合は、寝た状態で着替えをおこないます。そのときも、「脱健着患」を意識することは変わりません。ただし、患側を下にした横向きの姿勢は避けたほうがよいので、その点は注意するようにしてください。
ズボンなど下半身の着替えをおこなうときも、「脱健着患」を意識して上記と同様の手順でおこなっていきます。立位が保てる方であれば、手すりなどにつかまってもらいながら、立位が保てないようであれば横になった状態でおこなうとよいでしょう。
<できる範囲のことは自分でやってもらうことが大切>
着替えの介助は、毎日のことだからこそ、できるだけ負担を軽減したいものです。まずはゆっくりでいいので、ひとつずつ手順を確認しながら、着替えの介助をおこなってみてください。
また、着替えをすべて介護者が手伝うのではなく、できる限り高齢者にも自身で着替えてもらうようにしましょう。ADL(日常生活動作)を衰えさせないことが大切です。
3.車椅子からベッドへの移乗で気をつけるべき6つの注意点
病気や事故などによって歩行困難が見られる高齢者にとって、車椅子は大切な移動手段です。外出時だけでなく、食事やトイレ、入浴の際のちょっとした移動にも欠かせません。
しかし、ベッドから車椅子へ、また車椅子からベッドへ移乗するときというのは、失敗して床に転落でもすれば捻挫や骨折を引き起こす可能性も高く、高齢者の介助をおこなう立場としては非常に気をつかポイントでもあります。
そこで今回は転倒・転落ゼロを目指して、車椅子の正しい移乗方法をおさらいします。
<移乗の前、車椅子の点検をするときの3つのポイント>
車椅子の移乗について説明する前に、まずは肝心の車椅子のメンテナンスについて説明しましょう。
●ブレーキの利き具合
停車時にしっかりとブレーキが利いた状態でないと思わぬ事故に発展する恐れがあります。
●タイヤの空気圧
段差にぶつかった際のショックの吸収や乗り心地に影響してくるため、空気圧の確認は定期的におこないましょう。
●座席の座り心地
一般的な車椅子のシートや背もたれは、硬めの布などの素材で作られていますが、長時間座る場合、腰を痛めたり、褥瘡(床ずれ)の原因となったりすることがあります。体の負担を軽減できるように、クッションを腰に当てる、座面に低反発マットを敷くなどの工夫をしましょう。
<車椅子移乗における6つの注意点>
ベットから車椅子へ。車椅子からベッドへ。簡単なようで、慣れないうちはなかなかうまくいかないものです。基本的な手順やテクニックを覚えておかなければ、事故につながる恐れもあります。以下の注意点を確認して、安全に、互いに安心して移乗ができるよう努めましょう。
①ベッドと車椅子の感覚は15~30度
スムーズな移乗を可能にするためには、できる限りベッドと車椅子の位置を近づけることが重要です。ベッドのフレームと車椅子のホイールがある面との角度を15~30度に保ち、できる限り平行に停車するようにしましょう。
②ブレーキをかけ、フットレストを上げる
車椅子のハンドブレーキをしっかりと固定し、少しの弾みでも車椅子が動かないようにしましょう。また、つい忘れがちなのは、足を乗せるフットレストを下げたままにしてしまうケース。移乗の際に、間違えてフットレストを踏みつけてしまった場合、車椅子が跳ね上がって思わぬ怪我につながることも。
③介助者の腕は相手の腰(背中)に、被介助者の腕は介助者の肩に手を回す
ここまで準備ができたら、次はいよいよ移乗です。ベッドから車椅子に移乗する際、少しでもスムーズにいくように、まずはできる限り浅めにベッドに座ってもらいます。次に、介助者は相手の腰に両腕を回し、高齢者には自分の両肩に腕を回し抱きしめてもらうようにします。相手が腰に痛みや違和感を訴える場合は、背中を抱えるようにしましょう。
④前傾姿勢を意識し、自力で立ち上がりやすい状態にする
移乗を前に、お互いの体が密着した状態になりますが、介助者は、相手の上半身を自分がいる方向(前方)へ引き寄せるようにすることがポイントです。上半身をうまく預けてもらえば、重心の集まるおしりを自力で浮かせやすくなるため、立ち上がりやすい体勢がとれるというわけです。
逆に自分の体を相手の体の方へ近づけていった場合、腕力だけでは体を持ち上げられず、そのままベッドへ介助者ごと倒れこんでしまうこともあります。これは特に女性が男性を介助する場合によくある例です。
⑤介助者は両脚を広げ、安定した体勢を整える
上半身はお互い密着した状態ですが、介助者の下半身については、両脚を開いた状態で安定を保つことが重要です。
相手の両脚の外側に片足を置き、支えるようにします。もう片方の脚は車椅子の外側に置き、座面に腰を落とした勢いで車椅子が動かないようにしましょう。
⑥声かけでお互いの意思疎通を図る
体を持ち上げる直前に「❝1、2の3!❞で動かします」と声をかけ、意思確認をおこないます。お互いのタイミングがピタリと合えば、より少ない力でスムーズな移乗が可能です。
移乗の注意点を車椅子からベッドに戻る際も守り、事故防止に努めましょう。
<半身麻痺の場合の移乗方法は?>
脳梗塞や脳出血などの後遺症で左右どちらかに半身麻痺が見られる場合、両腕で介助者の体を抱きしめることは難しいでしょう。こういった場合どのようにすればよいのでしょうか?身体の麻痺がある場合を例に挙げて説明します。左側に麻痺がある方の場合はこの逆と考えてください。
まずベッドから車椅子に移乗する場合、ベッドの左側に車椅子を置きます。
このとき15~30度の角度を保ちましょう。次に、左手で車椅子の外側の肘かけをつかんで立ち上がってもらい、左足を軸にして体を回転して座ってもらいましょう。必ず車椅子のブレーキを確認し、しっかりと固定されてるかを確認した上で移乗してください。
車椅子からベッドへ移乗する場合は、ベッドに身体の左側を向けて車椅子を停車させます。左手でベッドに手をついて立ち上がってもらい、左足を軸に体を回転させて、ベッドに座るようにします。
どちらの移乗の場合も、機能している片足を活かすプロセスになります。介助者は必ず麻痺がある側に付き添い、体を支えるようにしてください。
<車椅子とともに見つける、始まる、新たな生きがい>
足に不自由が見られる高齢者でも、車椅子をうまく活用すれば行動範囲が大きく広がります。移動手段が増えることによって、寝たきりになるリスクも減少でき、少しでも体を動かすことを日課とすれば、ロコモティブシンドローム(運動機能低下に等による老化の加速)の予防にもつながります。
また、外出して景色を見たり季節の変化を肌で感じたりすることは、インドアになりがちな生活にメリハリを与えてくれるものです。車椅子生活になったことを決して悲観的にとらえず、明るく献身的に家族がサポートをしていけば、新たな生きがいや楽しみを見つけ出してくれるでしょう。