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​令和4年11月の研修報告です。​今月は「感染症とその予防について」の研修を行いました☻

1.日本における感染症対策ー感染症法ー

 わが国では、感染症を取り巻く状況の激しい変化に対応するため、これまでの「伝染病予防法」に替えて、1999年4月1日から「感染症法(正式名称:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)」が施行され、感染症予防のための諸施策と患者の人権への配慮を調和させた感染症対策がとられています。

 2002年11月から7月初旬にかけて東アジアを中心として世界各国に広がった「SARS(重症急性呼吸器症候群)」などの海外における感染症の発生、移動手段の発達に伴い、人や物資の移動が迅速、活発になること、保健医療を取り巻く環境の変化に対応するため、「感染症法」は2003年10月16日に改正(11月5日に施行)、さらに2007年4月1日からも改正され「結核予防法」と統合されました。

 高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)の感染拡大状況と新型インフルエンザが発生した場合のまん延に備え、2008年5月2日に改正(5月12日施行)されました。

 「感染症法」では、症状の重さや病原体の感染力などから、感染症を一類~五類の5種の感染症と指定感染症、新感染症の7種に分類しています。さらに2008年5月の改正により、新たに「新型インフルエンザ等感染症」が追加されました。感染症の種類により医療機関の対処法も異なり、それぞれの危険度に対応した対策を可能としています。

 最近では、院内感染が発生した薬剤耐性アシネトバクター感染症が五類感染症へ、蚊を媒体とするチクングニア熱が四類感染症へ追加されています。

​ 2013年5月には、感染拡大が続いているH7N9型鳥インフルエンザを感染症法に基づく「指定感染症」とし、強制入院や就業制限などの対策を可能にする政令を施行しました。このように、変化していく感染症に応じて、法体制を整え対策の充実が図られています。​​​

SARSの

世界的流行

高病原性鳥インフルエンザ

​ (H5N1)の感染拡大

​1999

​2003

​2008

新型インフルエンザ

​(A/H1N1型)パンデミック

  薬剤耐性アシネト

バクター感染症、​                 チクングニア熱の発症例

​2009

​2010

​伝染予防法

​感染症法

​改正

​結核予防法

​改正・統合

​改正

​改正

​2.感染症法における感染症の分類

​分類

​定義

​感染症名

​感染力や罹患した場合の重篤性などに基づく総合的な観点からみた危険性が極めて高い感染症

​エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱

​一類感染症

​二類感染症

​感染力や罹患した場合の重篤性などに基づく総合的な観点からみた危険性が極めて高い感染症

急性灰白髄炎、結核、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザ(病原体がインフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスであってその血清亜型がH5N1)

​三類感染症

​感染力や罹患した場合の重篤性などに基づく総合的な観点からみた危険性が極めて高くないもんのの、特定の職業に就業することにより感染症の集団発生を起こしうる感染症

​コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス

​四類感染症

​人から人への感染はほとんどないが、動物、飲食物などの物件を介して人に感染し、国民の健康に影響を与えるおそれのある感染症

​E型肝炎、ウエストナイル熱(ウエストナイル脳炎を含む)、A型肝炎、エキノコックス症、黄熱、オウム病、オムスク出血熱、回帰熱、キャサヌル森林病、Q熱、狂犬病、コクシジオイデス症、サル痘、腎症候性出血熱、西部ウマ脳炎、鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1)を除く)、ニパウイルス感染症、日本紅斑熱、日本脳炎、ハンタウイルス肺症候群、Bウイルス病、鼻疽、ブルセラ病、ベネズエラウマ脳炎、ヘンドラウイルス感染症、発しんチフス、ボツリヌス症、マラリア、野兎病、ライム病、リッサウイルス、リフトバレー熱、類鼻疽、レジオネラ症、レプトスピラ症、ロッキー山紅斑熱

​五類感染症

​国が感染症発生動向調査を行い、その結果に基づき必要な情報を国民や医療関係者などに提供・公開していくことによって、発生・拡大を防止すべき感染症

全数把握疾患

アメーバ赤痢、ウイルス性肝炎、(E型肝炎及びA型肝炎を除く)、急性脳炎(ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒体脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳炎及びリフトバレー熱を除く)、クリプトスポリジウム症、クロイツフェルト・ヤコブ病、劇症型溶血性レンサ球菌感染症、後天性免疫不全症候群、ジアルジア症、髄膜炎菌性髄膜炎、先天性風しん症候群、梅毒、破傷風、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症、バンコマイシン耐性腸球菌感染、風しん、麻しん

定点把握疾患

​RSウイルス感染症、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎、水痘、手足口病、伝染性紅斑、突発性発しん、百日咳、ヘルパンギーナ、流行性耳下腺炎、インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く)、急性出血性結膜炎、流行性角結膜炎、性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症、クラミジア肺炎(オウム病を除く)、細菌性髄膜炎(髄膜炎菌性髄膜炎は除く)、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症、マイコプラズマ肺炎、無菌性髄膜炎、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症、薬剤耐性アシネトバクター感染症、薬剤耐性緑膿菌感染症

​新型インフルエンザ等感染症

新型インフルエンザ:新たに人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザがあって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められているものをいう。

再興型インフルエンザ:かつて世界的規模で流行したインフルエンザであってその後流行することなく長期間が経過しているものとして厚生労働大臣が定めるものが再興したものであって、一般に現在の国民の大部分が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められているものをいう。

​指定感染症

​一~三類及び新型インフルエンザ等感染症に分類されない既知の感染症の中で、一~三類に準じた対応の必要が生じた感染症(法令で指定、1年限定)

​新感染症

​人から人に伝播すると認められる感染症で、既知の感染症と症状などが明らかに異なり、その伝播力及び罹患した場合の重篤度から判断した危険性が極めて高い感染症

〔当初〕

都道府県知事が、厚生労働大臣の技術的指導・助言を得て、個別に応急対応する

〔政令指定後〕

​政令で症状などの要件した後に一類感染症に準じた対応を行う

​(平成23年2月1日改正)

3.日頃からできる衛生管理

 感染症に対する基本的な対策としては、身の回りを清潔に保つことや、免疫力を低下させないことが大切です。私たちの体は、感染症を起こす病原体に対して、免疫の働きによって感染症を防御したり、症状を治したりしています。バランスのとれた食事をとることや基礎的な体力をつけること、規則正しい生活を過ごすことが、衛生管理の基本となります。

 感染症は、原因となる病原体や感染経路が異なるため、各々の感染症に対する予防対策が異なります。日頃からできるいくつかの対策を挙げてみましたので、衛生管理の参考にしてください。

(1)免疫力を低下させないためには

​・十分な睡眠をとりましょう。

・バランスのとれた食事をとりましょう。

・適度な運動をしましょう。

・できる限り規則正しい生活をしましょう。

・時々ストレス発散しましょう。

 

(2)食中毒にかからないためには

食中毒[ノロウイルス、腸管出血性大腸菌(O157)などの感染症]にかからないためには

①食べ物に対する注意

・材料は新鮮なものを選び、すぐに食べるか、保管する場合は冷蔵庫にできるだけ早く入れましょう。

・肉、レバーなどの食品は十分に加熱しましょう。

・調理用の箸と食事で使う箸は分けましょう。(焼肉など)

・調理したものは、できるだけ早く食べるようにしましょう。

②細菌・ウイルス対策

・調理や食事の前、トイレ後、おむつ交換時などには必ず手を洗いましょう。

・ウイルスや細菌を除去する除菌剤を備え、適宜使用して感染対策を心がけましょう。

​・発熱、下血、血便など普段と違う症状が出たときには、早めに医師の診察を受けてください。乳幼児や高齢者といった免疫力の低い方は特に気をつけてください。

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